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ハイストリマービットの評価
2005/12/16

最近mini-Shopで販売開始したハイストリマービットについて何件かの質問が寄せられた。 その中で共通している事は、安いだけのものではないのか? という心配の声であったし、インチ規格で作られた事に対する抵抗感であったように思う。

以前ある方とトリマービットの価格の話になったとき、「安いトリマービットよりも高いトリマービットの方が安心できる!」 とのコメントが随分と印象深く記憶に残っている。

  増えてきた私のトリマービット。 最下段は新製品ハイストリマービット。
 その方はプロだったがトリマービットのデリケートさや大変困難な生
 産・品質管理の事まで知っており、優秀なトリマービットは高くなら
 ざるを得ない!との見方から来ていた。
 そして大量生産によるコストダウンはあまり期待できないため、これ
 はかなり真実であると私は考えていた。 しかしARDEN製の黄色
 いトリマービットに巡り合って若干その考え方は変わった。
 ARDENは台湾のメーカーだが欧米での販売実績は非常に高く、
 生産量は世界でナンバー3に入る量を誇るのだが、その生産量の
 多さから来る徹底した生産合理化がそれまでのトリマービットの常
 識的な価格?!を覆す結果をもたらし、プロの酷使に耐えられる
 リーズナブルなトリマービットであることが判ったのである。

 これがARDENのトリマービットを販売したい!と考えたきっかけだ
 が、今回発売したハイストリマービットは更に度肝を抜くような価
 格設定で、冒頭に掲げたような「安いだけのもの?」といった疑問
 もむべなるかな!とも思う。

 ところで電動トリマーを購入された方にお尋ねしたいのだが、何本
 のトリマービットをお持ちだろうか? まさか電動トリマー購入時に
 付属していたストレートビット(6mmが多い)だけ! という方は殆ど
 いないと思うが、10本以上所有している方もかなり少数派ではなか
 ろうかと想像する。 その理由はトリマービットが高価であるからなかなか買い増しし難い!というのが多いと思うが、確かにトリマービットの購入は私の懐にとっても重たい。

しかしながら電動トリマーを購入してもトリマービットが1-2本ではそれこそ電動トリマーを購入した意味と言うか投資金額を回収できるような作業や応用が出来るとは思えない。 そんな場合に私はこの新発売のハイストリマービットを懐に優しい先端工具としてお勧めしたいと思っている。 そして私が大きなトリマービットケースを作らねばと考えたのは、ハイストリマービット販売開始と共に私自身も全種類を使用し始めたユーザーの一人なのである。

そういうことでハイストリマービットをどう評価するかをこれまでの黄色いトリマービットとの比較の中でご紹介したいと思う。

ハイストリマービットが何故安くできたかについて3つの理由を挙げている。 それらは、

   ・ムクのハイス鋼を使ったコストダウン。
    高価なチップ合金(タングステン・カーバイドを始めとした超硬合金)を接着するという高度な生産技術を要する作り方では
    なく、ムクのハイス鋼に置き換えることにより材料コスト生産性両方が改善できる。 この場合刃物としての寿命はチップ合
    金に比べハイス鋼は劣るが、アマチュアの使用頻度でそれがハンディキャップになるとは思えない。
    ハイス鋼自体鉄工ドリルなどに最も採用されている硬い材料であり、高度な次元での比較だと考えてよい。

   ・インチ規格のビットを元にして量産効果によるコストダウン。
    調べてみるとメートル規格で作られているトリマービットは、全世界ベースではマイナーであり圧倒的にインチ規格で作られ
    ているものの方が多い。 幸いメートル規格のトリマーの軸直径は6mmであり、インチ規格の1/4インチ6.35mm)より僅
    かに細い。 従ってインチ規格トリマービットの軸を0.35mm削れば、メートル規格の電動トリマーに取り付けられる。
    こんな僅かな変更で済む為、インチ規格をベースとした方がコストを下げやすい。

   ・コロ付きを止めてコストダウンを図った。
    ボーズ面ヒョウタン面サジ面など木材の角を成形する目的で作られたビットは殆どがコロ付きとなっている。
    このコロはスチールボールベアリングでガイドを果たす役目をしているが、ハイストリマービットではこれを外してしまった。
    コロの材料費や生産技術上の手間は大変大きいのでコストダウンに多大に寄与するし、スムーズに回転しないとまともな
    切削加工は不可能になるデリケートさも心配しなくて済む。

1番目の理由は私自身刃が切れなくなるまで使ったわけではないから何とも言えない部分はあるが、よほど堅い材料(樫や欅が典型的)を加工しない限り問題は起きないと踏んでいる。

2番目の理由も私はストレートビットでもない限りあまり気にしない。 例えば溝幅を3mmとか12mmとか一度で所要の幅に切削するならいざ知らず、細いビットで2回に分けて切削しよう(例えば10mm幅の溝を、6mmのビットで削るのと1/4インチのビットで削るのとの比較)とするならば、結果は全く違いが生じないからだ。

ボーズ面ビットで角を丸くしようとする場合でも、R1-2mm違ったって外観に影響する度合いは極僅かなのでこれも気にしない。 お化粧加工としての使い方では総て同様であり、インチ規格がハンディキャップになりうるシチュエーションは極々僅かだ。(この辺りの違いは後ほど写真でお見せする。)

3番目のコロ付きとそうでないのとはかなり大きな差が生じそうな気がする。(実際この部分だけは大きいぞ!!と私は思っていた。) 静止しているコロの替りに高速で回転する軸がガイドとして材料面に当たるのだから、どう考えても擦り傷や焦げ目が付いてしまいそうだ。  ところが実際に使ってみるとあにはからんや!、加工手順を工夫しさえすれば全く問題なく使えるのだ。
これは大変大きな収穫で、ハイストリマービットへの評価点はぴっぴっと急上昇した次第だが、これ以上ぐだぐだ抜かすよりもその実例を写真でお目に掛けよう。

 これまでのトリマービット(左 BZ-25Gハイストリマービット(右 TRB-17H ) 価格差は2.5倍以上ありますので、
 なんとなしにハイストリマービットの頼りなさに繋がっているようにも思えます。 ボーズ面ビットはかなり人気が高いのと
 切削サイズが近いので以下のテスト用に選びました。

トリマービット使用に必要な各部の寸法の比較。 従来のビットでもインチ規格で決められた部分12.7mm1/2インチ)があります。 肝心な切削半径は、8mmに対して9.5mm(3/8インチとメートル仕様、インチ仕様の違いがあります。

ハイストリマービットの擦れる回転軸がどうなるかの実験。 鉛筆で線を引いた間に当ててみます。

4-5回、電動トリマーを操作し回転する軸で擦ってみました。 1箇所電動トリマーの移動を止めた所もあり(矢印)そこは焦げています。 こりゃ駄目か??と思ったのですが、

そこで実際の切削速度で2回擦ってみました。 ご覧の通り浅い凹み傷が付いていますが、焦げ目は付かないようです。

その上をお馴染の替刃式ヤスリM-20GPで研磨しました。 これなら全く問題ありません。 (木材に付着したシミのお陰で同じ場所だと言う事が判ります。)


 以上で回転軸で擦る事によるガイドでも全く支障ないことが判ると思います。 コロ付きのビットと違うところは木口面を成
 形後に研磨する事で、作業手順を考えてやるだけで済み難しい事はありません。

 それでも精神衛生上良くない! と思われる方は、次に掲げる別なガイドを併用する方法でやればこすれの問題は全
 くなく加工することが出来ます。




公称板厚15mm(実測15.3mm)の集成材の縁を丸く削り落とす実験。 最初にBZ-25Gを使って加工します。

片面を削り終わりました。 極普通のボース面です。

続けて反対側の角を削ったのですが、何と後から削った部分は余計に削りこまれ、段差が出来てしまいました。

その原因はこれです。 コロが当たるガイドとなる面が既に削られてしまったので、更に内側に当たり深く削りこんでしまったのです。

その解決策。 片方を削り終ったらガイド板(右の幅狭の板)をトリマー台座に当てます。

そしてトリマーを外し加工する板の端からガイド板までの距離を測ります。 (この写真だけ地面にピントが合ってしまいました。 失礼!)

そして反対側の面の測った距離と同じ位置にガイド板を固定します。

そして切削すれば削りすぎの段差がなく加工できます。 実はこの時にコロは全く仕事をしていません。 同じ原理をハイストリマービットでも使えばよいのです。

ハイストリマービット先端の太さを5mmとしてその半分をトリマー台座の中心からの距離45mm)より差し引き、42.5mm離れた位置にガイドを固定します。

そして片面を削り終わりました。 回転する軸先端は木口に接触していませんので、擦り傷は全く無しです。

切削後電動トリマーを当ててみたクローズアップ。 ご覧のように回転軸先端(矢印の先)は木口に触れていません。

反対側の角も同じ手法で切削して完成。

 BZ-25Gで成形したもの(上)TRB-17Hで成形したもの(下)の比較。 切削半径は前者が8mm、後者は9.5mmと違
 いますが、こうして見るとその差は殆ど目立たない領域と言えます。 よって私はあまり気にしないのですが、それよりも
 ビットの大きな価格差の方が問題です!

如何だろうか? ハイストリマービットは無い無いずくしの日曜大工を標榜する私にぴったり来る工具だ。 勿論種類が10種類しかない事や堅い木では無理なので、相変わらず黄色いビットのお世話にもならなければならないシチュエーションも起きるが、トリマー使用未体験の方やコストを抑えながらいろいろ楽しみたい方には超お奨め品である。 


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